3つの指導 




   3つの指導

   新学期がスタートし、早1か月。
   偵察戦が終わり、これからが本番というところでしょう。
   子どもも教師も、地が出てくるころですね(笑)
  
   「うまくいかない」
   「どうしたらいいか」
   相談されることが多いこのごろです。
   ほとんどの場合、対処療法的な相談ですね。
   その場しのぎ的になっています。
   毎日忙しいので、仕方ない面もりますが…
   指導のバランスが、かたよっているように思います。
  
   指導には、3つあると思います。
   
 1 直接的指導
 2 間接的指導
 3 無指導的指導

  1 直接的指導
  
   例
   ・授業中だらけているのでお説教する。
   ・宿題忘れの子を叱る。
   ・音読の声が小さい子→声を出すように指導
   ・歌わない子→歌うように指導
   ・「6年生としての自覚を持ちなさい」
  
   直接的な指導は、安易です。
   もちろん、大事なんですけど。
   これだけでは、現実は変わらないことが多いと思います。
   
   高学年になると、発言しない、音読しない子が増えるようです。
   一般的には。
   声を出さなくなるようです。あいさつ、音読、歌…
  「大きな声を出しなさい」
   といって、出すようになりますか。
   これで子どもが変わったら、楽なものです。
   ほとんどの場合、変わらないと思います。
  
   掃除の時間
   騒ぐ子、ふざける子、しゃべる子がいます。
  「静かにしなさい」
  「掃除しなさい」
   変わらないですね。
   叱っても、効果はその場限りです。
   教師がいなくなれば、同じことを始めます。
  
   漢字、計算
   教えても教えてもできるようにならない…
  
   直接的指導は、効果がないことが多いですね。
  
   それを打開するのが、「2 間接的指導」です。
  
  

  2 間接的指導
  
   辞書を引かない子がいました。
   たくさんいました。
   その中の一人は完全拒否しました。
  「めんどくせー」(Rくん)
  というのです。
  「辞書を引きなさい」(直接的指導)
  といっても、やろうとしません。
   そこで…
   班対抗漢字ゲームをやりました。
   たとえば「さんずいのつく字」
   1班からから順番に発表していきます。
   いえなくなったら負けです。
   何周もするうちに、だんだん苦しくなってきます。
   Rくんの班は、相談しています。
  「もう、ないぞ」
  「どうする」
  「辞書見ようぜ」
  「先生、辞書見ていい」(Rくん)
   Rくんは、走って漢字辞典を取りにいきました。
  
   自分勝手な子がいました。
   Tくんです。
   かなり力のある子です。
   足が抜群に速いです。
   班のトラブルメーカーでした。
   何かにつけ文句たらたら。
  「協力してやりなさい」(直接的指導)
  なんていっても、一緒にやろうとしないのです。
   そこで…
   リレーをやりました。
   班対抗リレーです。
   4人がバトンをつないで走ります。
   そのタイムを競うのです。
   他の班とはくらべません。
   自分たちのタイムをどれくらい伸ばせるか!
   一番伸びた班が優勝です。
   T君は、大の負けず嫌い。
   優勝をねらっています。
   しかし、自分だけが速くても勝てません。
   Tくんは、みんなと話し合うようになりました。
   ・誰がトップを走るか
   ・走る順番は
   ・前の走者との打ち合わせ
   ・パスの仕方
   ・コーナーの走り方
   などなど。
   真剣に話し合っていました。
   放課後も練習していました。
   そして…
   Tくんの班は見事優勝。
   チームワークの勝利でした。
  
   
   漢字が大嫌いなSくん。
  「練習しなさい」(直接的指導)
  なんていってもやりません。
   そこで…
   漢字カルタをはじめました。
   勝負事は大好きなSくん。
   大負けして悔しがっていました。
  「先生、カルタ貸してください」
   カルタを覚えようというのです。
   給食を食べ終わった時間、休み時間を使って
   Sくんは、カルタを覚えていました。
   リーグ戦、一番下位のリーグだったのですが…
   なんと1部リーグ(一番上位のリーグ)になりました。
   とうとうチャンピオンに。
   それからです。
   Sくんが変わったのは。
  「先生、漢字っておもしろいね」
   その日から、漢字を練習してくるようになりました。
  
  
   子ども自身がやろうかな と思うようになる。
   自ら動き始める
   子どもの意識を変え、自ら動き出すようにする
   これが間接的な指導です。
  
  
   知り合いのM先生から、メールがきました。
   6年担任になったとのことです。
   最上級生の自覚を持たせるために…次のことをしたそうです。

 今日は,入学式でした。                  我が校では初めて,六年生が一年生の手をつないで入場しました。
 手をつなぐことで,少しでも自覚が出ればと思い,提案しました。
 本番では,一年生より,六年生の方が緊張していました。(笑)

   手をつないで入場させる…
   最上級生としての自覚をうながしています。
   見事な間接的指導です。
  
   みんなで、間接的な指導について考えていきませんか。
  

  2 間接的指導 Part−2
  
   「子どもはいうようにはならない」
   「するようになる」
   といわれます。
   言葉によらない指導、これが間接的指導です。
  
   いいたいことをいわない…
   たとえば、次の言葉です。
  「靴をそろえなさい」
  「宿題をやりなさい」
  「勉強しなさい」
   このようにいっても、効果はありませんね。
  
   ただただ黙ってやるのが間接的指導です。
  
   靴をそろえます。
   教師が率先してやります。
   教師が黙って行動するのです。
   (黙動…もくどう といいます)
  
   1か月→3か月→半年と続けます。
   言葉を発しません。
   黙って行動するのです。
   すると…そのイメージが、子どもに入っていきます。
   頭でなく毛穴から入っていきます。
   そっとそっと知らないうちに。
  
   教師と同じことをする子がでてきます。
   一緒に靴をそろえるようになります
   ともだちの、他学年の子の靴をそろえるようになります。
  
   もっと短期間にできる場合もあります。
  
   黙って、その曲をかけ続けます。
   黙って、その詩を貼っておきます。
   キーワードは、「さりげなく」
  
   1〜2週間ごとに歌、詩を変えてもいいでしょう。
   これを3か月続けます。
   毎日続けていると、それが自然になってきます。
   興味を持つ子が出ててきます。
  「先生、歌おうよ」
  「みんなで詩を読もうよ」
  「そう、やってみる」
  
   簡単にいうと、準備をするのです。
   受け入れる準備です。
   レディネスのようなものですね。
  
   子どもが自然に動き出す…
   自ら動き始める
   子どもの意識を変え、自ら動き出すようにする
   これが間接的な指導です。
  

  3 無指導的指導
  
   簡単にいえば、次のようなことです。
 
  
  ただいるだけで
  
   あなたがそこに  
   ただいるだけで  
   その場の空気が
   あかるくなる
   あなたがそこに
   ただいるだけで
   みんなのこころが   
   やすらぐ
   そんなあなたに
   わたしもなりたい
   
 『にんげんだもの』相田みつを より
  
   ◆ 無指導的指導へのヒント
  
   言葉はエネルギーです。
   言霊(ことたま といいます。)
   ※よく「ことだま」といわれますが、正しくは、「ことたま」です。
    「霊(たま)」とは、命を指します。
  
   すばらしい学級をつくっている教師は、無意識のうちに、これらの
  ことを使っているのです。
  
   「この子はよくなる」思いの力→想念
   「君はよくなるよ」言葉の力→言霊
  
   表面…学級経営の力、教育技術、指導力など
   裏面…想念、言霊、氣など
  
   裏面がないと、うまくいきません。
   決定的な違いは、裏面があるかどうかです。
  
    子どもの机を拭く、教室を念入りに掃除する
    これは、裏面なのです。
    教師の思いを込めているのです。
     その子の机→その子へ伝わります。
     教室→子どもたちへ伝わります。
  
  
   名優が舞台に立ちます。
   客席の空氣が一変します。
  
   寄席、つまらない落語が続き客席がざわついてきました。
   名人落語家といわれる人が登場。
   ざわつきがぴたっとおさまりました。
  
   とどのつまり、存在感です。
  
  
   子どもを惹きつける力を持つあなた
   雰囲氣を変える力を持つあなた
   空間を変える力を持つあなた
  
    そんなあなたに
    わたしもなりたい