ある子とのかかわり

 


   ある子とのかかわり

   すべてにおいて厳しい…子が、伸びてきました。
   10マス計算(かけ算)の連続で、ゴールが見えるところまできました。
   リーチです。
   今日は、最後の列までいきました。
   ×0〜×5までは、かなりのスピードです。
   みんなにくらべても、それほど遜色ありません。
   ×6になると、がくんと落ちます。
   ×7、がくがくがくんと落ちます。
   ×8、これがネックです。
   ものすごく時間がかかります。
   イメージ的にいうと、×0〜×5 よりも×8に時間がかる…
   そんな感じです。
  「×8を練習すればいいんだけどなー」
   私だけでなくみんなこのように思っています。
   しかし…あんまり練習しないんですね(笑)
   最近は、徳川家康です。
  「鳴くまでまとうホトトギス」
   私のほうが先に「泣いたり」して(笑)
   ゴールまで、あと6つ。
  

   すべてにおいて厳しい…子が、伸びてきました。
   10マス計算(かけ算)の連続で、ゴールが見えるところまできました。
   リーチです。
   今日は、最後の列真ん中まできました。
   あと5つです。
   ネックは、やはり×8ですね。
   ちょっと練習すればいいのになー。
  「泣くまでやろう計算指導」(笑)
   いえいえ、ここはじっとがまん。
  「鳴くまで待とうホトトギス」
   徳川家康の忍耐だ!
  
   周りの子も変わってきました。
   ソフトなかかわりをしています。
   追い込みません。
  「おしかったね」
  「あと少しだね」
  「がんばったね」
  「×0〜7まではすごくいいよ」
  「すごい進歩だね」
   私よりずっと大人かもしれません。
   
   ゴールが見えてきたら、一氣に!
   これが常道です。
   でも、この子の場合は違うのです。
   「一氣」はダメなのです。
  
   そのかわり、違う面がの伸びてきました。
  

   10マス計算で得た力は、他に波及してきました。
   覚えるのがはやくなりました。
  
   以前は、覚えるのに時間がかかりました。
   すぐ忘れます。
   最初は、朝やったことを帰りに復習させました。
   テストをするのです。
   たとえば。「8×5」
   ただ1つだけです。
   クリアしたら先に進むのですが…
   全部忘れていました。
  「8×5は…」
   出てこないのです。
   2年生ならともかく、5年生ですからね。
   次は、朝やったことを給食のときに復習させました。
   全部忘れていました。
   2時間後にテストすることにしました。
   20分休み直前です。
   見事に忘れていました。
   1時間後にテストしました。
   忘れています。
   30分後…
   忘れています。
   10分後…
   忘れています。
   5分後…
   忘れています。
   3分後…
   忘れていました。
   カップラーメンができるのを待っている間に、忘れてしまうのです。
   ※1分後でも、忘れていました。
   見事な短期記憶(笑)
   参りました。
  
   私は、方針を大きく変えました。
   「8×5」だけで2週間かけるつもりでやろう!
   氣が長くないと教師は務まりませんね。
  

   私は、方針を大きく変えました。
   「8×5」だけで2週間かけるつもりでやろう!
   氣が長くないと教師は務まりませんね。
  
   最初は、理解できませんでした。
  「8×5ができないなんて…」
  「1分後に忘れるなんて…」
   考えられません。
   ※障害があれば別ですけど。
   この事実を受け入れるまでに、少し時間が必要でした。
   いつもは子どものせいにしない私が、子どものせいにしているのです。
  「いかん、いかん…」
   頭を振ります。
  「でも、限度があるだろう」
   2つの思いが交錯します。
  
   今のその子から出発しよう!
   ようやく、心が決まりました。
  「8×5」だけで2週間かけるつもりでやろう!
   2週間のスパンで考えると、太っ腹になります。
   できなくても大丈夫だと思います。
   ※1日でやろうとすると、あせりますね。
  
   毎日、何度も、くり返し、「8×5」をやりました。
   その子が苦笑いします。
   まだやるの? またやるの?
   私もにやりと笑います。
   そうだよ、できるまで。
   あれこれ思わないことにしました(笑)
   ひたすらやるのみ。
  
   どうでしょう。
   3日でクリアしました。

   クリアしたといっても、簡単な「8×5」です。
   「8×6」「8×7」「8×8」「8×9」は、苦戦しています。
   また、ぱっといえるようになっても、ぱっとは書けないのです。
   いえるけど、書けない。
   手の回路づくりが、まだまだです。
  
   8日(月)休み明け。
   10列真ん中、あと5つまで到達していたのが…
   この日は、9列いきませんでした。
   やはり、休みが入ると落ちますね。
   家で学習することの大切さを感じます。
   まあ、人生甘くないということでしょう(笑)
   公開授業のとき、2分を切ったら…
   この子は喜ぶだろう…
   ドラマチックだ!
   という感傷はいっぺんに吹き飛びました。
   現実は厳しいです(笑)
  

   9日(火)今週2日目です。
   どれくらい回復しているでしょうか。
   顔を見ると…
  「あなた、ずばりいうわよ」(※細木数子調で)
  「95題! まちがいない」(長井秀和調で)
  
   はたして…
   前半のスピードは、すばらしいです。
   昨日は、×3でひっかかっていました。
   今日は、さっと通過します。
   6の段あたりから、スピードが鈍ってきました。
   7の段、がっくん。
   8の段、がっくん、がっくん。
   9の段はまあまあですが…時間切れ。
   95題でした。
   予言的中(笑)
   まあ、こんなものでしょう。
   
   8の段、もう少しカードをやる必要があるかもしれません。
   ※このところ、冷たく接しています。
   本人に任せているのです。
   今まで、つきっきりでしたから。
   私ががまんするときですね。
   その子の力を信じ、成長を待つ…
   
   今日は、どうでしょうか。
  

   10日、今日も10列途中までいきました。
   よく見てみると…
   大きな問題を発見しました。
   おいおいおいという感じです。
   その子は、左利きです。
   左利き用のプリントを使っています。
   しかし、使い方が間違っていたのです。
   このところ、その点はチェックしていませんでした。
   うかつでした。
   右利きと同じ方向に計算していたのです。
   つまり、プリントの左からスタート。
   右に動かしているのです。
   これは、ロスが大きいです。
   給食後などの時間を使って、個別指導しました。
   タイムは落ちても、あとあと伸びるように、向きをかえました。
   プリントの右から計算する→左側に動かす。
   やはり、がくんと落ちました。
   しかし、私の予想以上にできました。
   ※問題が変わっても、できていたのです。
   答えを暗記してできているのではないのです。
   よしよし。
   また、1からのスタートと思えばいい。
   急がば回れです。
   氣がついたら、変更。
   その場はマイナスのように見えますが、長い目で見ればプラスです。
  
   さて、今日はどうかな?
   

   やり方を変えて2日目。
   今日はどうでしょうか。
   85題でした。
   まあまあです。
   集中力もあります。
   顔も引き締まっています。
   以前は、口が閉じることはありませんでしたから。
   今は、口が閉じますね。
   上唇と下唇がつきます。
   筋肉が変わってきたのです。
  
   他の学習、取りかかりがはやくなってきています。
   超マイペース。
  「あなたは王様?」
   というくらいのマイペース(超スロー)だったのです。
   今は、かなり追いついてきました。
   意識が変わりました。
   頭から体へ伝わるスピードが速くなりました。
  
   10マス計算の取り組みが、他に波及しているのです。

   今日は顔が変だ。
   直感しました。
   家で何かあったのです。
   目にかげがあります。
   いつもの目と違います。
   私に見せないようにしていますが…
   ※もちろん、無意識のうちに。
  
   やり方を変えて3日目。
   今日は、もう少しできるようになる予定でした。
   しかし、思わぬ事態が発生したのです。
   これは厳しいな…
  
   予想通り、80題でストップしてしまいました。
   ×5までは、楽勝ペースです。
   6の段で失速。
   この段は、30秒以上かかりました。
   いつもは、12から13秒でクリアできるのです。
  
   子どもにとって、家庭の影響は大きいですね。
   改めて感じました。
  
   ※劇の練習のほうは、まあまあでした。
  
   仕切直しです。
   15日から再スタート。
   
  

   休み明けの月曜日、実力が一番落ちているときです。
   金曜日は、家庭でいろいろあったのでしょう。
   朝から不安定でした。
   目がちらつきます。
   集中しませんでした。
   月曜日は違いました。
  「おっ、今まで見たことのない表情だ」
   彼の月曜日からは考えられない顔をしていました。
  
   10マス計算、いつものように落ちていました。
   私の錯覚か?
   しかし、錯覚ではなかったのです。
   劇、集中して練習しました。
   国語の時間、自主的に発言しました。
   しかも、堂々と3回も。
   今までにないことでした。
   これは、チャンス。
   帰りの会で、劇の振り返りをしていたとき、声をかけました。
  「台詞をいってみて」
  「どうか、戦争をやめてください」
  「それじゃあ、誰もやめません」
   何度もやらせました。
  「誰もやめませんよ」
   押しました。
   その子が食いついてきました。
   台詞のいい方が変化してきました。
  「おっ、今のは3人くらいやめたかな」
   まだ押します。
  「8人やめた」
   このようにして、押しました。
   最後は、すばらしい表現でした。
   その場の空氣が変わりました。
   私がぞくっとしたくらいです。
  

   

   その子は、むらがあります。
   家庭での影響がもろに出ます。
   これだけ手をかけたら、ものすごく伸びるくらい、手をかけています。
   しかし、そう簡単にはいきません。
   私にとって、かなり手強い相手なのです。
  
   劇の練習では、力を発揮するようになりました。
   ※10マスは、横ばいです(笑)
   子ども役なのですが…やたらと、包帯が似合います。
   同情をかうこと必至です(笑)
   うーん、ものすごい才能を持っているのかもしれません。
   クラスのみんなにも一目置かれています。
  
   むらがあるので、いいときと悪いときがあります。
   集中しないときは、がくんと落ちます。
   同じ人間か?と思うくらい違います。
  
   人は、氣のもちようでこうも変わるものなのだ という典型です。
  

   その子は、むらがあります。
   昨日よくなった演技が…今日は、元に戻っていました。
   振り出しに戻るです。
   今日は、くり返し練習させました。
   何回かやると…泣いてしまいました。
   ※すぐに泣くのです。
  「氣持ちが伝わってきたと思う人?」
   見ている子どもたちに聴きます。
   杉渕学級の子は、やさしいけどシビアです。
   だれも手をあげません。
   それを見て、泣いたのです。
  
   泣いての演技。
  「お願いです。どうか、戦争をやめてください」
   ほぼ全員の手が上がりました。
  「うまい」
  「氣持ちがつたわってきた」
   など、絶賛されました。
   それから、指導開始。
   今のは、演技というより地です。
   泣いていた故に、成功したのです(笑)
   機会あるごとに台詞をいわせました。
   休み時間、給食準備中など。
   むらをなくそうという試みです。
  
   この台詞に関しては、むらがなくなってきました。
   氣持ちが伝わってくるようになったのです。
  
   明日は、本番。
   どうなるでしょう。

   学習発表会本番。
  「先生、包帯の巻き方ってこれでいいの」
  と聴きにきました。
   本当に包帯が似合います(笑)
  「いいよ」
   普通まっすぐに巻くと、「はちまき」になるのですが…
   この子はなりません。
   ほうたいは、包帯なのです。
   寂しそうな、悲しそうな雰囲氣が出ています。
   天性の役者かもしれません。
  
   本番、練習よりも「お願いします」がよかったです。
   氣持ちが伝わってきました。
  
   以前は…
   台詞を覚えられませんでした。
   覚えても…
   自分がいついうか、把握できませんでした。
   その子が今、私の目の前で、堂々と演じているのです。
   成長したな…
   一人で感動していました。
  

   学習発表会本番2に向けて
  
   本番1、堂々と演じました。
   ・今までで一番よかった。
   ・先生は感動した。
   ・悲しさがつたわってきた。
   ことを話しました。
   ただ、登場するとき照れ笑いをしました。
   そのことを指摘しました。
  
   本番2に向けての練習です。
   もっと悲しさを伝えようといいました。
   子どもグループの練習が始まります。
   本番成功しているので、氣をよくしてやっています。
   自信を持ったのでしょう。
   表情が違いました。
   3人の息が合っています。
   その子も、2人に息を合わせます。
   自分一人の台詞のときは、思いっきりいいます。
   どんどんよくなってきました。
  
   続けて、反応のことを指摘しました。
   ・メソが責められるシーン。
   →自分が責められているようで苦しい。
    それを表情であらわす。
   ・ピコのパスポートが再発行されるとき
   →自分のことのように喜ぶ
  
   あまり細かくやるとパンクしてしまいます。
   その子に合わせて、何店だけか「微妙な演技」を要求しました。
   このような要求を出すこと自体、すごいことなのです。
  

   学習発表会本番2に向けて
  
   本番2当日。
   最後の練習です。
   今日は、教室から舞台に入ります。
   出番まで1時間あります。
   余裕を持ってアップできます。
   その子は、和やかな表情です。
   目に自信があらわれています。
   これから演じるのを楽しみにしている目です。
  「大丈夫かな…」
  という不安はみじんもありませんでした。
   不思議ですね。
   一番心配な子なんですけど。
  
   パワーアップを図ります。
   ・細かな演技
   ・悲しみをより強く伝える演技
   子どもグループが練習を始めます。
   真剣そのものです。
   張りつめた空氣。
   直前まで、自分を高めようという姿勢が感じられます。
   そうです。
   クラス全体で、歴代杉渕学級の最高峰に挑戦するのです。
   「これくらいできればいい」
  ではありません。
   限界への挑戦なのです。
   その子が、自分をもっともっと高めようとする。
   そのこと自体がすごいことなのです。
   今、自分の限界を超えようと練習しているのです。
   たくましくなったものだ…
  

   学習発表会本番2に向けて その2
  
  「まだやるの」
  「もう、いいでしょ」
  という言葉が、辞書からなくなりました。
   あるのは「次の課題」でしょう。
  
   まわりの見る目も変わりました。
   以前は、その子のレベルで見ていました。
   前にくらべてどれくらい成長したかを見ていました。
   今は、違います。
   演技そのものを見ています。
   全員で創っている『夢から醒めた夢』
   作品の質を基準に見ています。
   ですから、シビアです。
   その子だからおまけする、その子だから甘くすることはありません。
   補助輪なしの見方なのです。
  
   その子もたくましくなりました。
  「悲しさが伝わってきた人」
   誰も手をあげません。
   以前だったら、すぐに泣いたでしょう。
   今は、泣きません。
   挑戦します。
   泣いて逃げていたその子は、今はいません。

   学習発表会本番2に向けて その3
  
   さて、いよいよ本番です。
   その子登場。
   不安などみじんも感じませんでした。
   祈るような氣持ちもありませんでした。
   ごく自然に舞台を見ていました。
   もちろん、「がんばれ」と応援していましたが。
  
   前日と違い、照れ笑いしません。
   登場前から、演技に入っていたようです。
   前の子の台詞が、抜群によくなりました。
   悲しさがストレートに伝わってきます。
   感情が言葉に乗り、心に響いてくるのです。
  
   その子が台詞をいいました。
   前の子とのコンビネーション。
   2つの台詞が会場をしーんとさせました。
   暴走族の踊りで盛り上がった会場の雰囲氣が一変したのです。
  
  

   学習発表会本番が終わって
  
   すがすがしい表情でした。
   何かを達成したときの、さわやかな表情です。
   いい顔です。
   すっとしたつきぬけた表情です。
  
   2度の舞台が、その子を変えました。
   一生に何度もある経験ではないでしょう。
   何百人もの前で台詞をいう…
   誰も助けてくれません。
   自分一人です。
   自分だけが頼りです。
   でも、バックにはクラスの仲間がついているのです。
   そして私も。
  
   ある方の参観氣を紹介します。
  
   あの子自身、内心「やった!」と
   思っていたのではないでしょうか。
   舞台が終わってからの表情や仕草は、
   別人のように変わっていました。
  
   掃除の時間、理科室をのぞくと
   この子は興奮のあまりか、
   もろ肌脱いで雑巾がけ。
   「風邪ひくぞ〜」と声がかかると
   照れくさそうに袖に腕を通しました。
   体育館での後片付けのときも
   大きなゴミ箱を抱えて
   小走りに集配場を往復。
   終わるや脱兎のごとく
   階段を駆け上がって行きました。
  
   この日あったことは、
   もう忘れてしまったかもしれない。
   でも、大勢の観客が見つめる舞台の上で
   自分がなにを感じとったかだけは、
   夢から醒めても覚えているかもしれない。
   幽霊としてではなく、人間として。
  
  「どうか戦争をやめてください」
  「お願いします」
  「ぼくたちからもお願いします」
  「八〇歳」
  
   たった四つの台詞ながら
   渾身の力をこめて
   たった一人で表現した――。
  
   自分を変えることができる。
   自分は変わることができる。
  
   もしかしたら
   そんなきっかけが芽生えるかもしれない。
   そうに違いない、そう信じたいと思わせる
   なにかが、『夢から醒めた夢』にはありました。
  
   
  

   25日、今日は体育集会でした。
   大縄です。
   10人が同時に飛ぶのです。
   その子にとっては、ものすごく難しいことでした。
   転校してきたときのことです(もう1年以上前)。
   足が遅いのに驚きました。
   一番遅い子の倍以上遅いのです。
   私が歩いているより遅いのです。
   全員リレーをやりました。
   半周以上の差がついていても、あっという間に抜かれました。
   そのことに代表されるように、すべてができませんでした。
   未発達でした。
  
   1年かけて、運動神経のほうも鍛えてきました。
   しかし、縄跳びは難しいのです。
   みんなと合わせて跳ぶということがE難度なのです。
  
   ところが…
   なんと、跳んでいるではありませんか!
   その子がみんなに合わせて跳んでいる…
  「跳んでる!」
   感動しました。
   もちろん、ひっかかるときはその子です。
   しかし、5回、6回と合わせて跳べるようになったのです。
  
   何かが変わりました。
   何かがはじけました。
  
   その子の変化が、はっきりと表にあらわれたのです。
  

   次の日のことです。
  「杉渕さん、100点取ったのよ。はじめてよ」
   大興奮の算数の先生。
   算数は、少人数制を実施しています。
   基礎コースは、少人数制の先生が担当しています。
   その子は、そのクラスなのです。
   いくら教えても…すぐに忘れてしまいます。
   ですから、テストにはひじょーに弱いのです。
   その直後ならできるんですけれど。
   テストとなると、以前学習したことも出てきます。
  
   それが…100点
   信じられません。
   今までよくても40点くらいでしたから。
  
   昨日の大縄といい、今日の100点といい…
   その子の奇跡は続きます。
  
  

   その子のことを書き始めてから20回。
   長期連載になりました。
   発端は、10マス計算王手でした。
   もうすぐ連続2分を切ることができる!
   その記録を書こうと思っていました。
   しかし、人生はおもしろいですね。
   話は、思わぬ方向に発展しました。
  
   10マス計算は、リーチのままです。
   あと少しというところで、足踏みしています。
   もう少しだからがんばらせよう と思ったとたん進歩が止まりました。
   このへん、指導について考えさせられました。
   やはり、一人ひとり違う…
  
   『夢から醒めた夢』の取り組みスタート。
   劇の練習を通じて、その子は成長しました。
   まわりの子の見る目も変わりました。
   堂々とした演技です。
   まわりの子が、その子の演技を評価したのです。
  「○○くんは、これくらいできれば…」
   ではありません。
   劇を創るかけがえのない一人として、実力を認めたのです。
   ・本番の堂々とした演技
   ・大縄跳びができるようになった
   ・テストで100点をとった
   どれも、以前のその子からは、考えられなかったことです。
  
   私自身も、いろいろ考えさせられました。
   私の力が入ると…その子の成長がストップします。
   思わぬところで思わぬ結果が…
   10マスに取り組んでいたのが…結果として、違うところでブレイク。
   教育って…ますますわからなくなりました。