どの子も伸ばす指導 |
どの子も伸ばす 「庖丁人味平」というマンガを知っていますか。 子どものころ読んだのですが… 今でも鮮明に残っている話があります。 あるラーメン屋は、だれもが満足して帰るのです。 九州の人も東北の人も。 薄い味が好きな人も、濃い味が好きな人も。 だれもが満足するのです。 その秘密は… 店長が、お客と話をしながら、スープの濃さを決めていた のです。 お客を観察し、出身地を探ります。好みを探ります。 そして、その人にあったラーメンを出すのです。 子ども心に、「なるほど」と思いました。 私たちでいうと、その子に合った指導をするということです。 「一人ひとりに応じた指導」 口でいうのは簡単ですが、実行となると難しいです。 どうしても、指導に子どもを合わせがちです。 ※これは、無意識のうちにやっています。 ですから、氣づかないことが多いです。 今年度は、リコーダーの指導をしています。 基礎の時間を使って。 今年受け持った子どもたち。 昨年度、かなり練習をしていました。 一人ひとり吹かせてみると… 吹ける子は吹けるのですが、吹けない子は吹けません。 差がすごいのです。 全体でやるとできているように見えるのです。 一人ひとり見ると、そうでないことがわかります。 音色がきれいでない理由がはっきりしました。 上手な子の指導は、意識変革からスタートします。 ※自他共に「上手」だと思っている子 ・間違えないで吹ける ・音が割れない これくらいの認識です。 ・イメージ ・立ち方 ・姿勢 ・ホールド ・くわえ方 ・息の吹きこみ方 ・その他いろいろ 私から見ると、全然できていません。 ただ、音を出しているのです。 音楽になっていないのです。 まあ、こんなことをいっても仕方がありません。 まずは、事実を示すことからはじめます。 私が演奏します。 くらべさせます。 その違いは、あきらかです。 「違いがわかりますか」 うなずきます。 ショックをうけます。 他の子どもたちも、同様です。 ここが指導のスタートです。 |
システム 10マス計算。 計算力をつける有効な方法ですが… うまくいかないこともあります。 個人差が大きい場合です。 最初から、差がついています。 驚異的な差です。 速い子は10秒でやります。 遅い子は、30秒以上かかります。 やる前から、大きな差があるのです。 ふつうにやっていると、速い子は待ち時間が多くなります。 遅い子はいつまでも速くなりません。 せっかくの効果的な方法も、無駄になってしまいます。 料理と同じですね。 いくら素材(10マス計算)がよくても、調理法がよくな ければ… そこで、その子に合った指導が必要になります。 例えば… ◆30秒かかってもできない子 基本的な計算が、パッとできません。 できない計算を、抜き出します。 例えば、2の段です。 口頭でやらせてもいいでしょう。 「2+5」 というように問題を出します。 2+○(※○のところは、0〜9の数) パッと答えられなかったらチェックします。 「えーっと」 なんていうのはダメです。 「2+8」 「10」 瞬間的に答えられたら、合格です。 できない問題を、書き出します。 それが、その子の課題です。 答えを覚えさせます。 カードが有効です。 表 2+7 裏 9 パッと答えられるようになるまで練習させます。 ◆15秒くらいでできる子 どのスピードが不足しているかを調べます。 心…やる氣 頭…パッとできるか できない問題がいくつかあります。 頭の信号が手に届くスピードが遅い場合があります。 手…書くスピード それぞれに応じた指導をします。 答えを書くたびに手を浮かせる場合 →「手をプリントにつけたまますべらせるように動かそう」 答えを書いてから、次の問題を見ている場合 →「答えを書いているとき、目は次の問題を見よう」 ◆10秒以内でできる子 「目標タイムを設定しよう」 目標を決めさせます。 9秒とか8秒とか。 ◆5秒以内でできる子 「逆からやってみよう」(難しいです) 「5秒たったらスタートしよう」(追いかけ) 「10秒で2列やってみよう」 その子にあった指導。 教師の引き出しが多くないとできませんね。 「何とか伸ばしたい」 という思いが引き出しの数を増やします。 |
個人差 先日、学年会がありました。 ※私の学校は単級です。 学年会は、低・中・高、2学年ごとにおこないます。 高学年には、音楽の先生が入ります。 話題になったのが、個人差です。 若い先生たち(2人とも20代、私は…)は悩んでいま した。 「あまりにも個人差がありすぎて…」 とのことです。 実力差がありすぎて、授業がうまくいかないそうです。 どの子を基準にして授業するか 「進んでいる子を中心とすると、遅れている子が…」 「遅れている子を中心とすると、進んでいる子が…」 「中位の子を中心とすると、進んでいる子も遅れている子 も…」 いわゆる、普通の一斉指導ではこうなるのです。 だれもが、ぶつかる問題ですね。 カルチャースクールでは、段階別のところが多いですね。 初級、中級、上級とか。 スキースクールもそうでしょう。初心、初級などなど。 「TTだったらなー」 「人数がもっと少なければなー」 という声も聴こえてきます。 段階別にできれば… 人数が少なければ… こういう事実もあります。 「島の子の学力」です。 どの島においても、学力不足が問題になっています。 神津島、神津小学校は単級です。 一番多い学年で、29人。 少ない学年で16人です。 全校児童は、139人です。 島によっては、学年2人とか6人とか。 かなり少人数なのです。 しかし、学力がついていないのです。 これは人数のせいなのでしょうか。 「杉渕先生は、どこに合わせるのですか」 さて、私は何と答えたでしょう。 |
どの学校でも、問題になっているのが個人差です。 塾では、少人数制、マンツーマンの指導が主流になって います。 学校だけが、旧態の一斉指導をおこなっているようです。 どの子を基準にして授業するか 「進んでいる子を中心とすると、遅れている子が…」 「遅れている子を中心とすると、進んでいる子が…」 「中位の子を中心とすると、進んでいる子も遅れている子 も…」 いわゆる、普通の一斉指導ではこうなるのです。 だれもが、ぶつかる問題ですね。 「杉渕さんは、どこに合わせるのですか」 「私は、一人ひとりに合わせて指導します」 「…」 「一人ひとりを指導している授業もあるでしょう」 「…」 「水泳指導なんかは、一人ひとり指導しているでしょう」 「はあ?」 「一人ひとり見てあげないと、上達しないでしょう」 「そうですね」 「1列4人くらいずつにして指導すれば、一人ひとりが見 えるでしょう」 「はい」 「10マス計算はどうですか」 「…」 「パッと見ていけば、一人ひとり把握できるでしょう」 「…」 水泳指導 正味60分。残りは移動時間です。 この間、20回はしますね。一人につき20回です。 最低でも、これくらいします。 1回指導→できたら→次の指導。 できなかったら→もう一度。あるいは、形を変えて指導。 「Aくん、頭の位置がちょっと高すぎます。これくらい入 れてみて」 「Bくん、水をたたいています。スッと音をさせないで入 れてみて」 「Cくん、水のボールを体の後ろに押すように」 というようにアドバイスします。 次の回は、それができたかどうかを見ます。 そして、また指導します。 このくり返しです。 10マス計算 動きを見ます。 それぞれの子にアドバイスします。 1列につきわずか10秒です。 10秒でいろいろなことを見ないといけません。 全員を見ます。 できない人は、班ごとに見ていくのもいいでしょう。 「先生は、自分のことをよく見てくれている」 こうなったとき、子どもは伸びます。 ある程度の腕がないとできない… そんなことはありません。 やろうと思えばできます。 私の見る限り、やらないで「できない」という人が多い です。 「できるはずがない」 「一斉指導とは、一斉に同じことを指導することだ」 と思っているとできませんね。 一斉指導でも、一人ひとりの指導はできます。 |
具体例 水泳指導 夏休みが始まりました。 水泳指導の初日です。 最初は、4〜6年生の部 私は、フォームがよくない19人を担当しました。 まずは、実態調査です。 わかっている6年生は、それぞれ課題を示しました。 Yさん 「息をするとき、前を向いています。耳を前の腕につける ように」 Hさん 「左手が外に出ていません。息継ぎしなくていいから、ま ずは出すこと」 Aさん 「息継ぎのとき、首を横にまわすこと」 Kさん 「顔を上げすぎ、足が沈んでいます。おへそを見るように して泳ぐこと」 他の学年は、1回泳がせてみます。 「…」 うーん、これは指導のしがいがあるなー。 4年生は、型ができていません。 共通しているのは、息継ぎの時のフォームです。 いわゆる、普通の一斉指導ではこうなるのです。 だれもが、ぶつかる問題ですね。 基本的なことを教えました。 ・平泳ぎの息継ぎとの違い→首の動かし型 ・首の使い方→横にまわす ・目はどこを見るか→後方を見る ・耳を前の腕につける 1回につき1回の指示です。 次は、一人ひとりの指導です。 4年生 Sさん 「前の手が沈んでいます。前の手は浮きです」 ビート板をもってやらせました。 「この感じ(腕が浮いている感じ)をつかんでね」 Aさん 「後ろを見るように、先生を見て泳いでごらん」 このような感じで、やっていきました。 19人、一人ひとりを見ます。 手を取って指導します。 このサイクルをくり返します。 テンポよく進めます。 上達した子は、ほめます。 次の課題を出します。 上達しない子は、角度を変えてアドバイスします。 手を取って指導します。 ぐんぐんうまくなっていきます。 次は、平泳ぎです。 1回、泳がせてみました。 Rさんが、とても上手です。 伸びのある泳ぎです。 上手な子がいるときは、見本をやらせます。 「Rさんの泳ぎを見てごらん」 Rさんの動きに合わせて、解説?します。 「ああやって、体を伸ばすことが大切なんです」 もう1回やってもらいました。 「ウルトラマーン(体を伸ばす)1,2,3 かいてーウ ルトラマーン」 19人、のみこみが早かったです。 タイミングがとれるようになりました。 ちょっと指導したところで、時間切れ。 「この続きは、どうなるのかー」 1〜3年生の部 浮ける子〜5メートル泳げるレベルの子を担当しました。 22人います。 まずは、1回泳がせてみました。 蹴伸びの調査です。 ほとんどできていませんでした。 ・耳を腕で挟む ・潜ってから蹴る ことを教えました。 蹴伸びの練習 「赤い線(5m)までいけたらすごい」 4人が、5mいきました。 10人が、4m。 6人が、3m。 2人が、2m。 ↓ 蹴伸び→「パッ」(息継ぎ) ↓ ばた足 やらせてみました。 力が入っている子がほとんどでした。 力んでいるため、あまり進まないのです。 力を抜くようにいいました。 「歩くとき、こうやって歩かないでしょう」 力んであるくまねは、バカ受けでした。 といっても、そう簡単にはいきません。 プールサイドに腰掛けてのばた足。 一人ひとり足をもって教えました。 ビート板を使ってのばた足。 一人ひとり足をもってやりました。 力が抜けてきた子は、ビート板無しでやらせました。 いろいろやりました。 だんだん、力が抜けてきました。 進むようになってきました。 さあ、検定です。 15人が合格しました。 5m泳げなかった子が、5m泳げるようになりました。 6人。 圧巻は、5mやっとだった子です。 10m(プールの横)泳げるようになりました。9人 7人は、残念ながら合格しませんでした。 そのうち、5人はすでに10m合格している子でした。 ※本当は、私が受け持つチームではなかった子です。 2人は、ばた足の力が抜けませんでした。 ひざの曲がりもありました。 あと少し、というところでした。 次回は、いけそうです。 |