修行の原点 |
本格的に修行するきっかけになったことを書いてみようと思います。 人間はおろかです。 本を読んだり、人の話を聴いたりしても、本当のところはわかりません。 「ああ、そうか」と実感したとき、わかるのです。 わかると行動が変わります。 行動が変わらないのは、まだわかっていないということです。 |
相手のことを考える | |
相手のことを考える ある人(信州出身の人 茶道の先生)の本を探していた私は、信州 の井ノ口先生という方に連絡しました。失礼だとは思ったのですが、 葉書を出しました。 そうしたら、すぐに電話が来たのです。見ず知らずの私にです。 しかも、70歳くらいの方が。 「私は、あなたの探している本をもっていません。でも、調べたらそ の人のお弟子さんがわかりました。私の知っいる人でした。東京にい ます。電話であなたのことを話しておきましたから連絡してみなさい」 なんて親切なのでしょう。 さっそく電話しました。私の求めていた本を、その方はもっていま した。 井ノ口先生にお礼の手紙を書きました。 1年後、本をゆずってくださった方から葉書が来ました。 なんと、井ノ口先生が亡くなったというのです。 「死ぬ1日前に電話があって、あなたのことをよろしく頼む。あの人 は見所があるから茶道のことをいろいろと教えてあげてほしい」とい っていたそうです。 「あなたは、井ノ口先生に期待されているんですよ。その期待に応え てくださいね」といわれました。 それを聴いて、ハンマーで頭を打たれたようなショックを受けまし た。 1度も会ったことのない私のことをそこまで心配してくれたのか… 死の直前… 自分にはとてもできない と思いました。 井ノ口先生は、見ず知らずの私に、「私はもっていない」で終わら ず、調べてくれました。 動く義務はないのに、すぐ動いてくれました。 しかも、死ぬ前にも私のことを考えてくれていたとは… そこまで自分のことを買ってもらえるとは… 涙が止まりませんでした。 私とは人間の格が違うんだ と思いました。 相手のことを考える…相手の立場に立つとはこういうことだ! 私は井ノ口先生のようになりたいと思いました。 これが、私の原点であり根幹であるのです。 |