堰八先生の教え


 堰八先生は、知る人ぞ知るすごい方です。
 私の師匠です。
 先生から、許可をいただきました。
 先生の書かれたものを掲載いたします。
 四月 深呼吸で学級の息吹を感じる時
                            ★思いやりは友をつくるが  
                              真実を言うことは敵をつくる

  熱し易く冷めやすい教師の体質

 学校の一年を通して、最も充実している時は、四月ですね。
 ピカピカの一年生だけでなく、それぞれ進級した、すべての子ども達は、光り輝いているように見えます。先生方のお顔にも、新しい年度にかける決意が表れています。世は春爛漫、春季発動期を迎え、万物成長の時期です。私には、知らない土地にいっても学校の存在がなんとなく漂ってきます。それ程、この時期の学校は気力が充満しているのです。
 ところが春の遠足が終わった頃になると、もう倦んで頽廃的な空気が校舎から校庭はへ、そして通学路までにじみ出てきます。桜の花のように、春の果なさを感じます。校庭をご覧なさい。始業式から二週間までの限定期間、全校の子どもと先生方で満ち溢れていました。なかには、老骨をおして校長先生らしい人まで、よちよちと子どもにまじって、戯れている姿も拝見できました。桜の花びらが散る中での一幅の風景画でしたね。「あっ」という間に、ぎすぎすした情緒のない灰色の世界に学校は沈んでいくのです。

 先生方の年間エネルギー発散計画表

 
 燃える
 平常
 低迷
燃焼度 月 10 11 12
        

 解説

 4月 新学期、殆どの担任は一年間かかって強制することをこの一ヶ月でやり遂げようとする野望に燃える。学習態度(姿勢、用具の整備、学習の方法、読む、書く、見る、話す、聞く、)生活指導(歩行、遊び方、特別教室の使い方、便所、水道、戸や窓の開閉、服装、持ち物、掃除、給食当番、食べ方、食事作法、挨拶、言葉使い、宿題、家での暮らし方、朝起き奨励、就寝時間、洗顔、歯磨き―)

 新しい師弟関係に理想を描く。
 昨年までは、子どもとの人間関係がしっくりしなかった。子どもともっと密接に関わって、信頼と尊敬を寄せる教師になろう。
  優しい先生  
   注意、小言はなるべくいうまい。子どもの意見を尊重しよう。
   いっしょに遊ぶ時間を取ろう。
  ものわかりのいい先生
   腹が立っても表面は「よしよし」と繕う。
   外面菩薩内面夜叉(ストレス滞納型)
  「やる気」いっぱいの先生
   どの子もわかるまで、粘り強く教えてやろう。
   ていねいに説明してやろう。
  親切な先生
   どんな小さいことにも気を配って注意してやろう。

 ※ これって、並べてみると学習指導・生活指導の目指す方向に比べて少しずつ矛盾しているのですが…これって、子どもにとって【迷惑】なんです。

 ★張り切って ― 四月いっぱい持ちますか?連休が始まります。命がけで躾たことは無残にもなんの痕跡も残さない程消えている現実にぶつかります。その鬱積が以後の一学期の低迷をきたします。それが、五月の低迷なのです。

 10月 は運動会(10月の場合が多いようです)そしてぐったり11月の低迷
 12月は、学習発表会、そしてぐったりの低迷、やや持ちなおしてボーナス。
 三学期は、ただ何となく時間の消化…二月になれば、もう後始末、教育委員会からの要望の文書製作、学校の本年度のまとめ、卒業式準備忙殺。

 年間この試案で観察してみると「先生意欲」で燃えている時って、なんだか対外的な圧力がかかっているようですね。
 4月…PTA総会   9〜10月…運動会  10月〜11月…学習発表会
 これに燃え尽きて、その後に低迷期を迎えているようです。更に、授業公開研究会でもあれば、その後の低迷度は底知れません。更に、更に、毎月のPTAの授業参観があるのですよ。先生方の口癖「忙しい。忙しい」どうもこれは、子どもの健全育成の本務ではなくて、このような、はっきり言って【世間体】にこだわっている所産のような気がします。お尋ねします。

 急いてはことを仕損じる  

  「急がずば濡れざらましを旅人のあとより晴るる野路の村雨」  古歌

 何故、慌てて担任になると、なんでもかんでも自分の知っている限りを尽くして子ども達を攻める自分をしっかり見届けてください。「なんでそうするのか」過去の経験を思い起こしてくださいよ。「それでどうだったのか」

 契約期間一年間なんです
 
 1 本年度の心構え
 「慌てなくてもいいが、落ち着いてもいられない」

 2 教室を自分らしい教室に仕上げること
   清掃が行き届いていますか。
   学習環境に無用な物がありませんか。
   学習雰囲気は…けばけばしい。沈みきっている。落ち着かない。
              やる気をそそる。清潔感がある。楽しい雰囲気

 3 子どもを知り、吾を知るは、一年間危ぶむことなし
  じっくり子ども達を観察するゆとりを持ちましょう。
  ・この世に同じ子はいません。タイプ別はいますけれど
   動物型にしてみると… 犬、猫、鼠、狸、狐、栗鼠て …
   近年、犬型の子は少なく、猫型が増えましたね。猫型は、難しいですよ。
   註 私の場合、多いときで九匹も集団飼育しました。
      猫の顔色でなにを要求しているか。
       嬉しい、怒っているの感情の変化が
      飼育生活60数年で分かるような気が致します。
 
  ・名前を覚える先に【顔】を覚えましょう。
  ・前学年までの学習癖のプラス面マイナス面の把握
   四月いっぱいは、前学年のやり方を尊重して観察してみる。 
   ただし、無条件ではなく少しずつ自分の思う方向にしゃだん斜断作用を試みる。
   註  斜断作用とは、
      子ども達の「やろう」としている意欲を尊重し正面からではなく、
      斜め後方(45度)より押し上げる。
      この方法は、植物の接木法より思いつきました。
  ・先生を先頭にして「はい」という返事の励行
   明るい声、大きな声、にこやかな顔、顔を向けての返事
   その時の感情によって「はい」は同じでも伝わるものは違う
  ・学習は、「急がず慌てず」まず「わかりません」を育てましょう。
   学習になると学級が
      「意欲グループ」
      「放念グループ」
      「停滞グループ」
   にわけられます。
   発問に順次生をつけて、どのグループからでも「わかりません」が気軽に出てくる
   学習雰囲気の醸成が涵養(かんよう)になってきます。

  ・発言の基礎を育てる。
   1「はい」 2「わかりません」 3「もう一度お願いします」
   4「いいえ」 5問い返し「こういうことですか」

   発言の際には語尾をしっかりいうことに気をつけさせる。
    「です」 「ではないでしょうか」 「と思います」

   発言の趣旨をはっきりさせて発言する
    「賛成ですが、つけ加えます」 「反対です。理由は」 
    「全然違うことかもしれませんが」 「同じことかもしれませんが」
    「そうです。だから―」
    「おかしいじゃありませんか。そうだとしたら―」
   話し合いは座って―  意見は立って―  賛成・反対は座って

  ・発言の機会を数多く与える授業を組み立てる。集団学習の初歩的指導
    思いつき ― 問題設定 ― 仮説 ― 推理 ― 検証

  ・内容を精選して、単純で、明快で心地よいスピードをもっている。
    4〜5月中旬までは、これを基本として学級に学習感覚を養い、固定化を図る。   註 ― やがて、込み入った、もたつきのある、授業に進みます。
         それまでは、単純・明快な授業で弾みをつけておいてください。

   できる、やれる ― できそうだ、やれそうだを誘導する。 
   そして、勉強って「面白い」 「楽しい」を引き出す。

 4 学級の中では「実力bP」を目指しましょう。
   返事も、字のきれいさ、言葉がはっきり、我慢強さ、粘り強さ、
   掃除、給食、草とり、歩き方、笑顔、挨拶、工作、描画、作文、
   詩、等々

 5 ご注意いたします。ポスター・言葉の多用でのことは、「お知らせ」で
   教育とか指導とかにはなりません。
   「言ったよ」 ― 「聞いたよ」だけのことなんですね。


 
 五月 風薫る教師
ため息の出る教師

  五月(さつき)の鯉の吹流し

 5月7日 … 久しぶりに子ども達が登校してきます。
 十分に気力を貯えてのご出場ですか。歩き方、眼の動き、表情から汲み取れることはなんでしょう。それを基に五月第二週の生活指導の計画を立てなければなりません。
 潜水病を頭に描いてください。海底深く沈んだ人間を急に海面に引き上げたらどうなるでしょう。同じように一週間も遊びほうけていた子を急に学校生活に引き戻そうとすればするほど学習から遠ざける結果を招くでしょう。
 ・学級の大多数の子が、「連休も済んだ、さぁ、学習に励むぞ」
 ・学級の大多数の子が、「連休も終わった。学校に行かなければならないのか。
                 やれやれ ― いやだな」
 両者の違いは、四月にお知らせしたように、四月一ヶ月間の担任の指導観点の相違によります。
 1 新しい学年になったことを強調し過ぎて精神的に硬直させてしまう。
 2 前担任の学級を称揚し、現担任の学級を悪し様に言う。
 3 一年間懸かって指導する生活指導方針をすべて強要する。
 4 学習指導 ― できる子中心  できない子中心  偏向している。
   教える=口で、「言った」 「しゃべった」 ― 「わかりましたか」で結ぶ。
   子どもを拘束して知識を押しつけていた。
 5 連休を前にして宿題を少な目にして「しっかり遊んでおいで」と開放
   練習を前にして宿題を多くして「遊ぶだけではいけない」と脅かす。の違い。

 連休が済んで学校再開 ― 四月、一ヶ月間、死力を尽くして教え込んだ数々…
 なんにも残っていません。
 【五月の鯉の吹き流し】風のいままに漂っています。
 一週間のお休み…学習欲に飢えています。食欲に合わせた学習を展開する。
 これが五月の課題なんです。

 註 ― これを教師のテイーチング能力といいます。
      教育能力とは ― 研究能力+テイーチング能力

 毎年の例ですが、四月、新しい学級を担任して、子ども達に「優しい先生」「面白い先生」【楽しい先生」に見てもらいたいと涙ぐましい努力を重ねて、一ヶ月過ぎました。(生来、それが木地であれば問題はありませんが、たてまえでこれを演じることには努力がいります。)その限度は、5月第三週ぐらいまででしょう。本来の自分の指導に立ち戻ってしまいます。教師の仮面が剥がれるのです。『やっぱり』これが子どもの反応でしょう。子ども達は、教師のホンネを見通しているのです。心安らかに、なんの未練もなく教師との間に距離を置いて来年の三月まで、『味気ない学校生活』を送ることになるのです。溜息の出るのは教師より子ども達の方なのです。

  繰り返します。教育は、教えることと育てることとの二重構造になっているのです。
 
教=万人が求めるマニュアル  育=個性のためのプログラム

 更に 

教=教科書を教える  教科書で教える
各教科の系統的学習  集団学習の方法
 個人学習の方法
                                   
  學ぶこと 読む 書く 計算 覚える 聞く 考える 話す マネルこと

  習うこと 
   自己主張=どの場面でも自分の思いを表現できる これを基盤とする
   自己制御=どの場面でも自分の思いを制御できる
 ナレルこと

 
四月は押しつけることなく、前学年に基づいて伸び伸びと学習を展開させ、じっくりと観察し、学級の実態を把握して指導計画を温め、五月第二週は準備期間、第三週より、いよいよ行動開始  

 学習の最終目的はどの子にも「100点」を取らせることではなく、「できた!」という【達成感】を持たせることではないでしょうか?

 達成感に至る過程 
   参加する _ できそうだ _ できた _ できる _ やってみる



     
 北風太陽  学習全員参加させる教師条件

 先ず学習に全員参加させることが、学級構成上の基本的条件です。
 (1) 集団行動の意義を教え、厳しく躾ける。
 (2) 一人ひとりの子どもが学習に「楽しさ」を感じさせるように指導する。

解説 (1)は、「学習方法」の枠を設定して子どもに学習を通して要求する。
      当然、その枠にはまらない子は、注意、叱責の対象になる。
      (2)は、学習内容に工夫をこらし、子どもの興味・関心の度合いを徐々
      に強め、できそうだ(面白そうだ) ― これだったらやれそうだ(解決・解答の道筋を掴む) ― やった・できた(他に依存しての達成) ― これを何回となく経験して学習参加の姿勢・態度が次第に整ってきだす。
 殆どの先生は(1)の方法に個室して在職年間を全うします。何故でしょう。それは(2)の方法には、危険と不安が伴うのです。
 ・だんだんと子ども達が騒然としてきます。今までは、じいっと息をひそめていた子の集団が学習に参加するのですから当然の結果なのですが不安なのです。
 ・一時間、一時間の学習に全員参加させる学習方法の工夫ができない。一週間ぐらいで根負けしてしまう。(今までしたことも考えたこともない=未経験)
 ・従来の「できる子中心」の歯切れのいい授業が忘れられない。教師発問 ― 「できる人」「わかった人」 ― 教師指名 ― 「そうです」 ― 次は ― 学習効率が高い。
 ・全員参加させると学習効率が低く、精神的、肉体的にも疲労度が高い。
 ・先の見通しが出来ない。 「お先真っ暗」
 ・教材が消化できない。どこからか文句が出る恐怖に耐えられない。

 5月21日を最後に  ―  (1)の方法に切り替えてしまうのです。
 
 
参考 従来の学習では
 ・学習の核になっている子ども集団 … 全体の約二割程度
 ・それをフォローする集団 … 一時間註1〜3回程度発言
 ・それを見守る集団 … 掛け声屋さん「そうです」 「はーい」 「わかりました」
 ・凝固 している集団 … 目をそらしたり、手なぐさみなどしないで、じいっと成り
  行きを見守っている。気が弱い。「はい」 「そうです」 「わかりました」 みんな
  に合わせて口の中でブツブツ言っているのが、かすかに動く口の動きでわかる。
 ・全然参加の意志のない集団 … 学習状態が思わしくない時、学習の気分転換
  ―  教師の叱責の対象になり、他の子どもの「憩いのひととき」をもたらす。教
  師も一息入れられる。

 言葉指導よる全員参加

 四月指示事項を継続してください。
  ・発言の基礎用語の反復活用 
  ・語尾指導
  ・発言の趣旨の重要
  ・発言の機会の多様
  ・内容精選
 
 そして五月は ― 人間の生活は言葉によって次元の高さを追求できる。(堰)

  ・生活用の言葉指導

  「ありがとうございます」 「すみません」 「ごめんなさい」
  「失礼します」 「失礼しました」
 五つ一度にの指導ではなく、現在の学級の生活状態を考慮に入れ、「何を先行
させたら子ども達の関心を呼び、実現に近付くか」これが担任の責務でしょう。大
半の子が履修しだしたら、あとの言葉は子ども達の自治活動に委ねることもいい
でしょう。 しかし、やはり、教師の実践態度が明暗をわけます。

  ・教師用語の浄化を図る
  「しなさい」 「やめなさい」 「考えなさい」の縮小を図る。
  語尾に「ね・の・よ」の使用の励行
  言葉によって子どもの感性の変革を図る。
  1 正しい、ていねい、きれい
  2 感じのよい話し方 ― 声の出し方、区切り、大きさ、間、速度

 楽しい学習(学校生活)から楽しくする学習(学校生活)

 1 学習に参加できるようになる ― 参加している ― 見通しが明るい(道筋)
 2 学習がわかりだした ― わかる ― 次の時間が楽しみになる。(達成度)
 3 学習・学校生活を通して「自分の生活の目標」が持てた。
 4 人の立場が、自分の体験を通して「考えられる」ようになった。
 5 自分の行動を「興味・関心」から「必要」に切り替えていける改革

 
団生活の基盤「人に迷惑をかけないこと」強く意させることです。

 これを「合い言葉」にして、学習・生活の向上を教育・子ども達、一体化を図って五月〜七月までの生活指導の原点とする。

 プライミング現象 … 脳がある刺激を受けて働きが制限される。

 同じ言葉を繰り返して使用すると、それが今後の行動に多大なえいきょうをあたえる

 註 「人に迷惑をかけるな」この言葉を一つの集団が合意に達する。(強制・抑圧でなく)この言葉を繰り返し使用することによって集団維持機能は、鮮明に維持機能を発揮する。これ一つでOK ホントカナ?

  … 与える 気づかせる 練る

  … 励ます 認める 慰める


 意欲を育てる。   
   評価基準は【明るい声と顔】

 
 学習場面を育てる … 三・七方式

 1 三とは … 学習方式のことです。

  全体学習(教師主導)  小集団学習(グループ)  個人学習

 1 全体 ― 小集団  ・  全体 ―  小集団の繰り返し
 2 全体 ― 小集団 ― 全体 ―  小集団の連続活用
 3 小集団 ― 個人 ― 全体 ―  小集団 ― 個人 ― 全体
 4 全体 ― 小集団 ― 全体 ―  個人
 5 全体学習
 6 全体 ― 個人 ― 小集団 ―  全体

  七とは子ども達の学習参加形態です。 

 求める(めあて) ― 掴む(道筋) ― みつける(仮説) ― 確かめる(確証) ―
まとめる (総括) ― 慣れる(習熟) ― 補う(深化・拡充)

 3 問答法を考える。四方式

 師問 ― 師答(これが最低) 師問 ― 児答  児問 ― 児答  児問 ― 師答

 4 直感養成問答法

 問題提出 ― 直結解答  パッと閃いたことを発表させる

 5 内言語養成問答法  選択肢を養成する

 ア ノートに解答を記入してから応答
 イ 頭に解答を複数浮かばせてから自分で選択して一つに決定を図る。
   但し、その選択した理由、基準を明らかにする。応じられれば説明できる

 五月は、授業中に【静寂さ】を子ども達の動向を捉えて養成しましょう。

 ア ノート指導の徹底

 各教科毎のノートの使用方法の研究(ヒントだけにとどめ個人研究)
 予習 ― 学習中 ― 復習 ― 補習(他の参考書使用)

 イ 問題集・テストの活用

 事前学習  学習中に併用  事後の実力テスト・応用充実

 五月終了

 疑惑・詰問  あんたがやったのだろう。ちゃんとわかっているのだ。
          やったのだからやったと言ったらどうだ。何で黙っている?

 懇願      頼むからやってくれよ。 これ以上先生を困らせるなよ。

 交換      これができたら次の時間は遊ばせるぞ。

 代弁      お母さんが「家では駄目な子です」って言っていたぞ。
          音楽の先生が「あの子は音痴だ」って言っていたぞ。

 世間体     先生は君のような子がこのクラスにいることが恥ずかしいのだ。
          他の先生にも顔が向けられないよ。

 心に「ゆとり」がなくなってくると効果を焦って感情が先走りしてついついこんな言葉がでてしまうのです。やはり相手は「子どもなんだ」という傲慢さが災いを引き寄せるのです。教師のしての矜持(きょうじ)を持つ重要さををわが心に刻みつけておきましょう。

 授業に感動を

 「感動とは、手間と努力を重ねて味わうものである」 松下幸之助

 ◆ 授業のリズム  作る作用(思考路線を綿密に辿る)
              壊す作用(概念を壊す多角的な認識の導入)

 ◆ 呼吸法の会得  まず吐かせる(子どもの言動を先行)
              そして吸わせる(聞く・読む・見る)

 ◆ 子ども達の内言語の重視
     えっ ほんと やっぱり しまった しめた なにくそ 負けるな

 ◆ 授業にソフト面とハード面の意図的導入
     ソフト面  … 家庭的雰囲気 自由感覚 個人的
     ハード面 … 集団的雰囲気 規律 持続 集中 緊張

 ◆自主学習(STUDY) 受動学習(LEARN)との重層学習

 平板な単調授業から抜け出して、子どもに学習のリズムを与えよう。

 
 「隣百姓」という言葉をご存知ですか?

 解説 … 自分から働こうとはせず、隣の家が麦を播けば自分も播く。隣が草取りをすれば自分もする。 というように直接自分が考えたり、行動したりしないで、まわりの様子にあわせて生計を立てているお百姓さんのことなのです。
 なんでこんな話を … そうです。教育の世界は、殆どこれじゃあありませんか。県の教育委員会は他県を、市町村教育委員会は他の市町村を、校長は近隣の学校を、担任は他の学級を これで創造性だの個性豊かだのとスローガンを掲げているのですよ。日本の教育最前線 … 総合的学習 … 今、書店で一番売れている教育書は総合的学習のマニュアルだそうです。子どもの興味・関心に基づいてが教師の興味・関心でみたら全国同じことしていたなんて想像するだけでも愉快の珍事ですね。それだったら、文部科学省、教科書を作ったら先生方の臨時出費が防げましたのに気がききませんなぁ。それから、学習指導でも、生活指導、学級づくり、なにからなにまで『どこかに安くて旨い物食わせる店ありませんか』じゃなくて『どこかに手軽に授業がカッコよくみせたり子どもが活発に学習するようなコツありまへんかぁ』

 「窮すれば通ず」 ―― 「艱難汝を玉にす」 ―― これしかありまへんなぁ

 若い先生に一言

 教師という仕事は、持って生まれた「資性」か。それとも教師という仕事の意義を深く意識した「使命感」か。いずれかを有しないと教育という本来の正当性を持った仕事の効果は挙がりません。「資性」と「使命感」の両方を有する人は、ずば抜けた仕事を残します。しかし残念なことには経験浅くして挫折してしまいます。この世界は、天稟(てんぴん)の才を持った者を消滅させる毒性があるのです。苦節五年。五年外部からの非難誹謗に耳を傾けないで、己の信じている「教育の実現」に刻苦勉励できたら素晴らしい教育の世界に没入できます。殆どの方は教師としての理想と現実との谷間に漂いなんとなく気分が晴れない胸の内で毎日を教育に勤しんでおられるのです。
 「初心忘れるべからず」 新採用の時の新鮮さを持続させましょう。 仙人の方言




 六月 「雨降って地固まる教室」と「じめじめした梅雨空教室」

 蒔かぬ種は生えません

 4月=整地(土地改良・肥料)
     学級機能改善(学習指導法・生活指導の方法の意識的改善)
        教える ― 見つめる ― 引き出す

 5月=播種(育つ条件の吟味)
     一人でできる仕事の充実 ― 学び強い子を育てる路線を歩かせる。
                         社会に対応できる力(社会力)の増幅
                        ・集団に寄与する  ━┓
                                      ┃姿勢づくり
                        ・集団から学ぶ    ━┛

 いよいよ田植えの季節になりました。雨期は動物・植物を問わず一年で一番「生命のあるもの」にとって成長が促される時期なのです。学級も5月〜7月前半が年間を通して最大の山場になっています。この時期の学級・個人の目標値に対する動きが感じられなければ、本年度の学級革新も掛け声だけで終わるでしょう。  

 子どもの「会心の笑顔」をどの場面で捉えられますか

 笑顔は子どもの象徴です。会心の笑顔こそ、教師の目指す生きた目標です。 
 笑い顔は、遊び、冗談、会話、… 子どもの全生活の中で見付けられます。
 しかし、会心の笑顔には、そうそうお目にかかれません。無感動の学校生活からは発生致しません。学習の中で子ども達の感動を求めようと願うならば学習に主体的に立ち向かう子ども達の心情を育てなければなりません。それには学習意欲を喚起自分から望んで学習に立ち向かう姿勢を作らなければなりません。ここまでは自明の理です。しかし … ここからが大変です。「言うだけでは簡単」実行に移すとなるとどこから手をつけてよいやら皆目わからなくなるのがこの世界の通弊なのです。  
 普通の状態では子どもは学習しなければならないという義務感と学習は苦痛であるという逃避意識に挟まれていて、実際の行動は、その子なりのバランスで成立しているわけです。つまり自分の意志で学習しているというより環境に支配されている面が非常に強いのです。これをいわゆる「主体的な学習」に子どもの意識変革を図るには

  1 義務感を子ども自体の願望に変えてやること
  2 学習に伴う苦痛を耐えられるように「より小さな苦痛」に変えること

 1 義務感(学習するのは当然である)親、教師を中心とした社会感覚に強制されて一応の学習状況に臨んでいるのが大半の子どもの実態でしょう。
 それを自分から望んで学習に立ち向かう姿勢づくりに必要な力は、一つの学習を成し遂げた喜びであろうと思われます。けれども、一つの学習を有効に成し遂げた喜びは、単に形の上だけの行為では生まれてきません。子ども自身がその価値に目覚め、自身を得ると共に、その事実を通して自己を見つめるまでに至らないと願望には変質しないと思われます。

 教師の感動を子どもにぶつけてみよう

 それに近づける教師の手段としていわゆる「評価」とか「行為を認めてやる」という仕事が重大な役割を負っていると考えられます。子どもの行為に教師が感動を抱くことなのです。教師の感動というと教師自身が教材に対して深い感動を表すということがどうしても前面に出ますが、地味な考え方ではありますが、学習中の子ども自身の行動(学習に立ち向かう姿勢)に対して感動を示すことが個々の子どもに深い理解を持つことであり子どもを「やる気」にさせていく大きな力になって支えていきます。

 子どもの感受性を育ててみよう


          ┌─ 学習方法が拙劣である
 無気力な子─┼─ 家庭での予習・復習は殆どしない
   │       └─ 学習を自分の問題という意識がない
   │
   │                  
   └─ 物事に対する価値観が  ┌─ 生活態度が不真面目である
      あいまいである      ─┼─ 思考力・感受性が低下
                       └─ テレビ・ゲーム・漫画の世界

   
   ───── 物事に感動する心が弱い ── という結論に達します。

 学校生活全般の中で ── 教師が子どもの姿に感動を覚える心を以て彼らの生活を見守る ── その感動が直接伝わるように子どもたちの「より良いものに感動する心」を育てる工夫が必要になってきます。
 ・朝会での毎朝、教師自身が身近に感じた説話…3分ぐらい、感想は聞かない
 ・毎週、感動が得られると思う「詩の紹介」…暗唱させてみるのも一興
 ・先生の目を通した子ども達の生活…一人の子、グループ、学級全体等
 ・学習中、掃除、給食等でみられた行為をその場で称揚
 ・認める。促す。誉める。慰める。いたわる。アドバイスを時宜を得ておこなう

 留意点  教師の立場(高い位置、監督)かたではなく、共に学習、掃除、給食を
        しながらの視点での説話でありたい。

 2 学習に伴う苦痛をそれぞれの子が許容できる枠内に止める配慮

 苦痛をのぞくのではありません。本来教育とは「困難に打ち勝つ力」と心得ています。
 しかし現実の問題として、学習に伴う苦痛に悲鳴をあげている子が年々増加しているのも事実です。一昔前までは、親も子どもに容赦なく「生きる辛抱」を教え込みました。
 それが現在に至って世の中こぞって「おんば日傘」
 子ども達を「苦労を避けて生きる」ことを当然として養育しています。
 学習中の発言に苦痛を伴う子が続出してきています。
  ア 恥ずかしい … みんなに聞かれるのが 注目されるのが
               間違ったことをいったら大変
  イ 怖い  …    先生が みんなが
               人からあとで言われる
  ウ 言い方がわからない
  エ 学習が全然わからない
  オ やだねったら … やだね
               全然興味がない 言いたくない


 学習指導の場で個々の子どもの「発言」に大きな「片寄り」がある。

 これを無視して学習指導をしてごらんなさい。いつまでたっても「じめじめした梅雨空教室」から抜け出せませんよ。出力は全開しても30人学級でせいぜい10人ぐらいのパワーしか期待できません。これで満足してる先生が多いのです。
 
 ア 言葉でなくて、実際の学習の場で、すべての子が

        ┌─ できません             ┌─ できます
  学習は ─┤             から出発して─┤
        └─ わかりません            └─ わかります

 そして記憶、習熟、発展を図ることを学習という。
 「わかる」 「できる」からテストが大好きなのだ。 

 イ この時間は『なにをどうするのだ』明確な問題意識を育てる 

 教科書はどこからどこまでがこの時間の範囲だ。
 学習用具は、なにを使用する。
 なにをノートに記入したらよいか
   書き方の工夫,、図式は  正確に迅速 ─ 習熟、年間の進歩改良

 ウ 学習方法に自分の意見を聞いてもらう

  学習についていけるか。 時間は  方法は
  自分の意見が採用してもらえる、もらえないよりも意見が具申できる自分の力量に自信をつける。

 エ 全員で学習の感動が味わえる感受性を育てる工夫

 学び方を考えさせる。
 ・こんなことをやるんだな。(問題把握)
 ・このようにやったり考えたらよいだろう。(予想)
 ・自分で一応まとめてみよう。そして先生や友達の動向に注意してみよう。
  (仮説をたてる ─ 検討を加える)
 ・自分は「なにがわかったのか」 「なにができるようになったのか」
  (学習結果の確認)

    学習構造の検討



 子どもにとって「楽しい学習」とは   

 ◆ させられたことより自ら求めたとき。 
 ◆ 甘さ、安易さではなく、辛さ困難に耐えて求められたとき。
 ◆ 子ども自身が「伸びた」 「高まった」ことを自覚したとき。
 ◆ 仲間、教師に認められたとき。

 学習の条件

 ◆ 学習の目的に向かっての自己活動を制限しない。
 ◆ 不安感を強めない。自信を持たせる。(ピグマリオン効果)    
 ◆ 認める機会の多用(ポリアンナ思考)   
 ◆ 効果的に競合される。
 ◆ 教材に魅力を感じさせる。
 ◆ 計画を持たせる。
 ◆ 行動を促進させる。   

 六月の子ども達の顔

 今年度の教育の成果を占う意味での第一回目の答申査察が、六月の子ども達の顔で判断できます。集団の中から下記の子を抽出してください。

 A型  目がキラキラ  動作がピチピチ  明るさがほとばしり表出
      自分から進んで仕事に取り組む。教師を含めての人間関係が親密

 まとめ 
     ・この子達は【開脳されています】
     ・この子を取り巻く社会がこの子達を(共感・信頼・是認)肯定しています。

 B型  目が伏し目  動作緩慢  暗さを温存  仲間が少ない
      視点が定まらない   ぼうっとしていることが多い

  まとめ 
     ・この子達は【閉脳されています】
     ・この子を取り巻く社会がこの子達を(無理解・不信・否認)否定しています。

 どうでしょう。A型が多いですか? B型が多いですか?
 この時期、学習状態に関係なく、また家庭環境に関係なく
 ・A型が多ければ、学級は今後、正常に機能を発揮していくことでしょう。加速的にA型の増加が見込まれます。学級が貴方の目指す軌道に乗ってきているのです。ゆとりを持ってじっくりと子どもの動向を見届けてやってください。
 ・B型が多ければ 、学級は今後、閉塞感が強くなり、仲間意識が希薄になります。
命令・禁止・指示・干渉・説教 教師としてその使用は当然なことですが … 過度になっている傾向はありませんか?
 命令の過度は … 自立心喪失の危険  禁止事項の過度は … 恐怖・不安を与える危険  説教・注意の過度は … 「どうせ病」症候群の派生をみます。

 教師が習癖になっている「否定表現」

 
指示・干渉   なにをぐずぐずやっている。最後まできちんとやれよ。 
注意・意見  きちんと片づけなさい。なぜしないのだ。だから …
提案  こうしたらよかったのに … こうしてみたらどう …
世話  鉛筆持った? ノート出している? 立てる? 座れる?
催促  書いたの? できたの? やったの?
非難・攻撃  あんたがよくない。 そんなことでいいと思っているの?
軽蔑・嘲笑  あんたなんかにできる訳がない。 こんなこともできないの?
強制・押しつけ   しなさいといったらしなさい。だめだといったらだめだ。
脅迫・懲罰  またやったな。何回いったらわかるのだ。 今度やってみろ承知しないぞ。
権威・恩着せ  先生に向かって何だその態度は  先生はどれだけ君のことを
 心配しているか君にはわかるか。
比較・差別  ○○君でもわかるのに  ○○君のようになってしまうぞ
偏見  あんな子のまねをしてはいけない。 あの子に近寄るな
放棄・排除  あんたなんかいないほうがいい。あんたの好きなようにしなさい。


 
七月 梅雨晴れ 青空 太陽             

 
 1学期=学級の揺籃期   
 
  4月 … 学級の基盤を固める       土地改良
  5月 … 個人の学習意欲のゆさぶり   播種期
  6月 … 学級・個人の相乗効果      除草 害虫 病菌
  7月 … 学級の上昇気運の確認     木葉生育確認

 学級を支えるゴールデン・ルール

 「担任に愛され、認められ、誉められて育つと、どの子もにこやかで素直で能力の高い子に変革されていく」

   七田式幼児教育論より発想を受ける。

 その基本的な考え方 … どの子も【すばらしい子】だと認めること

 これは、非常に困難なことです。「言うは易く行うは難し」の典型とも言えます。
教育の世界は、通常口先だけで論じていることが非常に多い社会です。ですから上記の「どの子もすばらしい」そうだ。そうだ。ですべての教員が肯定します。教育の現状は、そこまでなのです。それを実践の段階まで臨んでいる教員は極めて少ないのです。

 註  皆無ではありません。教育界の片隅でコツコツ変人、奇人と言われながら実践している教師もおります。この点が非常に重要なのです。
 つまり実現不可能ではないということを認識して下さい。但し常人なら我慢できないような刻苦勉励が必要です。教育の道50年一筋 … 私も未だ確信は持てません。只、それに近付く道筋だけは自信を持って誘導できます。

 ですから、素晴らしい子だと認めることではなくて認めようと努力することが重要です。

 これは、誓文です。 ……  毎年、毎年、子どもに裏切られる行為に接すること、数十回、いや数百回、それでも胸中深く「どの子も素晴らしいのだ」と思い信じていくことは至難の業なのです。事実があまりにも「素晴らしい子」から離れ過ぎているのです。「何でこんな子が…」 「これはどうしょうもない子だ…」とほざいたことも無数にありました。その都度「弱気の自分を叱咤激励」して一年一年の実践を重ねてきました。教育の原点は「どの子も素晴らしい子なんだ」と自分をマインドコントロール(mind control)【思想・感情・行動に一貫性をもって一定の方向に人為的に変革すること。洗脳とは異なる。】することでしょう。

 註 私が36年間、脇目もふらず生涯不変一仕事(子どもに直接働きかける仕事)現在に至っても追い続けているのは実にこの「どの子も素晴らしい」これを実証したかったことが要因だと思っています。
 但し … その実証に具体的に迫ったのは55才を過ぎたあたりでした。

 「学級づくり」という観点で捉えた一学期は?

 一学期=一人ひとりの子どもの学習意欲・生活改善意欲の向上

 個人重視   小集団   学級づくり
 4月     8    1     1
 5月     7    1     2
 6月     6    2     2
 7月     4    2     4

 問題 … 一学期の個人重視の学習活動は個人・小集団・学級全体のバランスは、どのような割合ですか?
 


 答え …… 上記のようなバランスを頭に入れておいてください。
 解説 4月は学級機構云々より、一人ひとりの子が学習にどう関わるかを中心
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